「 テーマ型小論文 」一覧

テーマ型小論文2つの書き方

テーマ型小論文の書き方にはこの2つのパターンがある。

・結論説明型 ・現状分析型

結論説明型

結論説明型は自分に関するテーマなど、答えが簡潔に答えられるテーマのときに使う。

(例)私の尊敬する人 私を変えた一冊 最近気になった話題

これらテーマに対して、まずズバッと答え(結論)から書き始める構成だ。

私の尊敬する人→私の尊敬する人は母親だ。

私を変えた一冊→私を変えた一冊はフランツ・カフカの『変身』だ。

最近気になった話題→私が最近気になった話題は多発する高齢ドライバーの事故である。

結論を書いたあとでその理由について、詳しく説明していく。そのため結論説明型だ。この書き方の利点は述べたいことが明快で、内容もブレづらいことにある。

現状分析型

現状分析型ははじめにそのテーマの現状について触れ、課題や問題点を分析しながら解決策(自分の意見)を述べていくという書き方だ。テーマに対する答えを一言で述べづらい場合に使う。

(例)・大型ショッピングモールの功罪(功罪とは良い点、悪い点)

・スマートフォンの普及で高校生はどのように変わったか

・離島や限界集落における医療についてあなたはどのように考えますか

「大型ショッピングモールの功罪は~だ。」と一言で述べるのは難しいので、このように書き出すとスムーズになる。

 大型ショッピングモールの進出は目覚ましい。いまや日本各地にあり、大都市やその郊外だけでなく、田園地帯のなかに突如巨大ショッピングモールが現れるということさえある。

まずはじめに大型ショッピングモールは現状どのような状況かを述べる。そして、そのあと功罪について分析していくという展開だ。

 スマートフォンの急速な普及により、高校生がスマートフォンを持つのも当たり前となった。私の所属する剣道部でも昨年度から練習や試合の集合場所など連絡事項はスマートフォンのアプリで行っている。

スマートフォンの問題テーマだと、いま高校生にとってスマートフォンはどのような存在なのかという現状報告から入る。それを踏まえて、どのような影響を与えているか、何がどのように変わったのかを分析していくという流れになる。

両パターンとも使えるテーマもある

単刀直入に答えることも、現状から入ることもできるテーマもある。

(例)飲食店は全面禁煙にすべきか

①私は飲食店は全面禁煙にすべきだと考えている。

②2020年の東京オリンピックを契機に、政府は飲食店の全面禁煙の方針を打ち出している。

①はテーマに対する答え、つまり結論から入る書き方、②は飲食店における禁煙の流れの現状から入っている。このような場合どちらが正解ということもないので、自分の書きやすいほうで書けばよい。ただ各々の書き方には特徴があるので、その点は考慮しておきたい。

[結論説明型]

長所:書きやすくわかりやすい。主張も最後までブレづらい

短所:結論から入るので字数が短めになる。様々な分析を述べるには不向き

[現状分析型]

長所:論を深めるのに向いている。字数を多くしやすい。

短所:気をつけないと、全体として何を述べたいかわかりづらくなる。

大切なことは書き始める前に全体の構成について考えることである。結論説明型、現状分析型のどちらを使い、何をどのように書いていくのか構想を練ってから書き始めよう。


結論説明型の書き方

結論(テーマへの答え)→説明(理由)→今後(抱負)

結論説明型の構成はこうなる。

まずはテーマに対する自分の答え・考え(結論)を述べ、その理由を説明する。そしてそれらを踏まえた上で、今後どうしていきたいか、どうすべきなのかを述べてまとめる。

では、例を見ていこう。

(例)私の短所

結論:私の短所はせっかちなところである。

説明:何かやらなければいけないことがあると、深く考えず行動に移してしまう。そのため早とちりをして失敗することや周りの人と歩調が合わないことがある。

今後:忘れていることや見落としていることはないか、周りの人はどのように考えているのかを確認してから行動するように意識していきたい。

結論→説明→今後という流れに沿って、内容を当てはめていく。志望理由書や面接の受け答えなどもこの構成だ。小論文の場合は、この構成の骨組みに具体的な話を入れ肉付けしていく。この短所の例でいえば、実際にどのような失敗したのか具体的な話を盛り込んでいく。最後「よって、私の短所はせっかちなところである。」と再び結論を書くように教えている人もいるが、それよりも今後の抱負を述べたほうがよい。

次は「礼儀の必要性」というテーマで構成を考えてみよう。

「礼儀の必要性は~だ」という書き出しだとしっくりこないので、「礼儀は~ために必要なものだ」と書き方を変えた。

結論:礼儀は周りから信用されるために必要なものだ。

説明:高校2年のとき私は剣道の試合でガッツボーズをし、顧問から叱責された。当時は納得できなかったが、振り返ってみると礼儀を守らず、相手への敬意も示さず、ただ勝つことだけに執着した私に、苦言を呈したかった気持ちもわかる。これでは勝者であっても、人として尊敬も信用もされない。

抱負:剣道で学んだ礼儀を忘れず、節度を持って、周りから信用される大人になりたい。

具体的なエピソードで膨らませる

上記の構成をもとに内容を膨らませていくのだが、その際大切なことはエピソード(体験談・具体例)を入れることだ。このエピソード選びがカギを握るといっても過言ではない。できるだけ長く詳しく説得力のある話を選ぼう。上の例では、小学生のときからやってきた剣道の体験談を伸ばし、礼儀の必要性を説いていく。

 礼儀が必要なのは、社会において欠かすことのできないものだからだ。礼儀を重んじない人は信用されない。私は剣道を通してそのことを学んできた。

私は小学3年生のときに剣道を始めたが、「剣道は礼に始まり礼に終わる」といわれるように、師範から礼儀をはじめに教えられた。しかし、小学、中学、高校と剣道を続けていくなかでその意識は薄れ、礼儀はいつしか形式的なものになっていった。

考え直すきっかけとなったのは高校2年のときの新人戦でのことだ。私は県大会準決勝で強豪選手との試合に勝ち、思わずガッツボーズをした。試合後も喜びのあまり礼を適当に済まして笑顔で顧問のもとにいったが、顧問は厳しい表情で、ガッツポーズと試合後の礼について私を𠮟責した。そのときには納得できない気持ちもあったが、時間が経つにつれ顧問の言葉を素直に受け止められるようになった。剣道は乱暴にいえば竹刀で相手を叩く競技である。対戦相手への敬意を払い、剣道の礼儀作法である礼式や所作を守らなくてはただの無法者の叩き合いになってしまう。勝ったことでその点をおざなりにした私に顧問が釘を刺したのも当然だ。このような態度では勝者であっても尊敬されることはないし、他人に指導する資格もない。

社会でも同じである。自分さえよければと自らの利益のためだけに行動しても周りから尊敬されることはない。礼儀を重んじ、他人の言い分や行動を敬い、節度を持って行動することで、人間関係も潤滑にいき、周りの信用を得ることができる。敬意も自然と集まってくることだろう。

剣道に関しても実生活に関しても、他人への敬意や自制心など私にはまだ至らない点が多い。まずは礼義作法や礼儀を重んじる心をいかなるときも忘れずに、節度を持って周りから信用される大人になるように努めていきたい。

剣道の精神、剣道の試合で礼儀について思い直すようになったきっかけ、なぜ礼儀は必要だと考えるか、今後礼儀に関して自分はどうしていきたいか、このような内容を入れて既定の長さの小論文に仕上げていく。上記の文でいえば、色の変わっている4段落目は丸々削っても文章は繋がる。いうなればどうしても必要な文ではないということだが、指定字数に合わせて書くにはこうした文も必要だ。できれば同じ内容でも長短書き分けられるように練習しておきたい。

はじめにテーマの答えをズバッと書く。そして詳しく書けるエピソードを入れて、その理由を説明する。最後は今後どうするべきか、どうしたいのかを述べて文章を締める。結論説明型はこのように書く。


現状分析型の書き方

テーマ型小論文の現状分析型の構成はこうなる。

現状→分析①(利点)→分析②(問題点)→今後(対策)

最初の段落は、結論説明型のようにテーマに対する答えを書くのではなく、テーマの現状、問題点について書く。一般的な小論文の参考書で「問題提起」と呼ばれている部分だ。

『挨拶できない若者について』というテーマで考えてみよう。

 いまの若者は挨拶ができないという大人の愚痴を聞くことがある。たしかに私の周りでも、朝や帰りに挨拶をしない人や、「ありがとう」「ごめんなさい」などといった簡単な礼や詫びもいわない人がいる。

このような書き出しだ。書き出しに個性的な内容は必要ないので、一般論や自分の周囲の状況などから始めるとよい。一文だと短いので、二文以上(句点が2つ以上)になるように心がけよう。

参考書のなかには問題提起ということで、この文の後に「ではなぜ、このような若者が増えたのであろうか」などと問いかけの文をつけているのもあるが、必要のない文である。そのまま「その理由として~」などと続けたほうが自然だ。

次に『現行の裁判員制度における問題点について、あなたの考えを述べなさい』というテーマで考えていこう。

「現行の裁判員制度における問題点は~だ」などと単刀直入に書くのが結論説明型だが、対して現状分析型では、まず裁判員制度の現状について述べる。

裁判員制度は施行より8年(平成21年5月)が経った。施行直後は国民の関心の高い裁判を中心に裁判員の下した判決が注目されたが、今では制度そのものへの関心も薄れつつある。

このような書き出しだ。まず裁判員制度がいまどうなっているのかを書く。このように8年と具体的に書いてあれば、読み手によく勉強しているなと思わせることができるが、わからない場合は無理せず「裁判員制度の導入により日本の裁判は大きく変わると見られていた。そのため施行直後は~」などと書くとよい。

 分析部分は2つセットで考える

現状を書いたあとその理由・原因を分析していく。現状分析型の場合は単純には述べづらいテーマが多いため、内容を2つセットにして考えていくとよい。書き方は大まかにいうと、2パターンある。

Ⓐ2つの分析を積み上げる…接続詞「また」「さらに」で繋ぐ

現状を踏まえて「その理由は~である」と述べたあと、「また~」「さらに~」と別の分析(理由)を付け加えるパターンだ。上の裁判員裁判の例だとこのようになる。

分析①

裁判員裁判への関心が薄れてしまった理由は、裁判員によって出された判決や量刑が、裁判員の入らない高等裁判所や最高裁判所の判決で覆るケースが多いからだ。裁判員裁判での死刑判決が、その後の裁判で無期懲役などに減刑されたことは一度や二度ではない。このように簡単に覆ってしまうようでは、裁判員のモチベーションが上がるわけもなく、何のための裁判員裁判かもわからなくなる。

分析②

また、守秘義務の重さも問題だ。現行制度では守秘義務違反を犯した場合、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処される。裁判員を経験してよかったという人も少なからずいるが、これでは裁判の感想やそこで得た経験を気軽に周囲の人に話そうという気にならないだろう。これではせっかくの経験も本人の中だけで終わってしまい、他人や社会と共有されない。一方アメリカなどでは陪審員に原則法律上の守秘義務はないため日常会話の延長上で裁判の話もできる。自分が感じたこと、疑問に思ったことなど、身近な人と共有し議論することができる。

「また」や「さらに」を使うと文を伸ばしやすいが、その反面理由をあれこれ並べただけということにもなりがちだ。他の「そして」「しかし」などにもいえることだが、接続詞は極力少なく、効果的に使うことを意識しよう。

Ⓑ逆接の接続詞を使って反論を入れる…「だが」「しかし」

小論文で最もよく使われるパターンである。よい面(メリット)を述べ、そのあとに悪い面(デメリット)を考える。利点のあとに問題点を述べる。

先ほどの裁判員裁判の例で、「また~」という文を「だが~」という文に変えてみよう。だが、までは同じ文章である。

 裁判員裁判への関心が薄れてしまった理由は、裁判員によって出された判決や量刑が、裁判員の入らない高等裁判所や最高裁判所の判決で覆るケースが多いからだ。裁判員裁判での死刑判決が、その後の裁判で無期懲役などに減刑されたことは一度や二度ではない。このように簡単に覆ってしまうようでは、裁判員のモチベーションが上がるわけもなく、何のための裁判員裁判かもわからなくなる。
だが、裁判員の下す判決が必ずしも正しいとはいえない。裁判員が犯行現場の残忍な写真や被害者遺族の涙ながらの懇願などを目にすれば、心情として重い量刑を与えたいと思ってしまうだろう。仮に私が裁判員になったとしても、そのような場面で冷静な判断を下す自信はない。法律の専門家ではない以上、裁判員が法律や判例より情に流されてしまうのは当然なのかもしれない。

このように接続詞を変えると必然的に内容も変わってくる。

小論文では誰が考えてもこうするべきだという問題は出ない。たとえば、消費税をなくして誰も困らないのであればなくせばよい。日本中の家に太陽光パネルをつけて日本の電力がすべて賄えるのなら、それを促進していけばよい。だが、そう簡単にいかないのには必ず理由がある。利点やメリットとセットで、想定される問題点やデメリットも考える。そのうえでどうするかを述べると深い論になっていく。

たとえば、消費税や太陽光の例でいうと以下のようなことを書く前に考える。

[消費税をなくす、税率を下げる]

利点:生活面で助かる。景気の浮揚が期待できる

問題点:その分歳入が減るが、財政をどうするのか。いまの社会保障制度が維持できなくなる。結局他の税を上げるか、社会保障などを削るしかない

[太陽光パネル]

利点:クリーンエネルギーで地球にやさしい。原子力発電をなくすことができる

問題点:コストは誰がどのように負担するのか。現実的ではない

これらを考えたうえでこのような構成に落とし込んでいく。

現状→利点(こうするとこのような効果やメリットが期待できる)→しかし(だが)+問題点(このような問題、デメリットがある)→(それを踏まえた上で)今後~していくべきだ

先に問題点や課題から述べたほうが書きやすいケースもあるので、下記のパターンも覚えておこう。

現状→問題点(~このような課題がある)→しかし(だが)+利点(それはこのようにすれば解決する。それにも勝るメリットがある)→今後~していくべきだ。

今後(対策)はできるだけ具体的に、実現可能なものにする

締めの文は結論説明型同様今後のことを書いてまとめる。自分のことであれば、自分は今後~していきたいと抱負や決意を述べる。社会的なテーマでは、今後何をどのようにしていくべきかを述べる。その際以下のことに気をつける。

①~してほしいと他人事のように書かない

②一般論や理想論だけを述べない。現実的に実現可能な内容にする

③とにかくできるだけ具体的に書いていく

先ほどの裁判員裁判のⒶのパターンの最後を考えてみよう。分析②という文章の次にこの文を入れる。

 守秘義務が課されている理由の一つとして自由な発言がしやすいためというのがある。たしかに判決に至るまで誰が賛成、反対で、誰が何をいったかということを公表してしまうと、後から非難にさらされてしまう恐れがあるため、その点には十分配慮すべきではある。だが、そもそも裁判員裁判という制度は国民の裁判への意識を高めるために始めた制度だ。どのような意見が飛び交ったかなどは名を伏せた上で発言できるようにすべきである。そうすることで裁判員裁判という制度にも再び光が当たるようになるだろう。

もう一つ別の文章、こちらはどうだろう。

 大切なのは裁判員裁判を活性化していくことだ。重大事件の判決結果は国民の意識も高く、SNS上やテレビ番組などで議論しているのもよく見かける。ここに実際に裁判員として関わった人の発言が加わればより深みを増すと思うが、現状ほとんどの人は守秘義務のため萎縮してしまい、表には出てこない。裁判に関わった人たちのプライバシーに十分注意を払った上で、裁判員の守秘義務をもっと緩和し、大いに語れる環境づくりをしていくべきだ。

似たような内容ではあるが。この二つを比べてどちらがよいだろう?

上の文の内容は守秘義務がなぜあるのかということについて知識がないと書けない。一方下の文はSNSやテレビの話など、知識というより普段の生活で感じたことを書いている。

小論文には正解がないので、上が正解で下が不正解ということはない。もっというと、この文だけでどちらの点数が高いかも一概にはいえない。全体の流れがあるからだ。

裁判員裁判のⒷの文の続きも考えてみよう。

この文は「裁判員裁判への関心が薄れていっている理由は、裁判員裁判の判決結果が二審三審で覆るケースが多いからだ。だが裁判員は法より情に流されるからそれも当然かもしれない」このような流れだ。まとめの文で大切なことは今後どうすべきかを具体的に述べることではあるが、それまでの文の流れを踏まえたものでなければならない。当然、守秘義務についてが中心のⒶのまとめ部分をくっつけてもおかしな文になる。

では、この文はどうだろう。

 必要なのはバランスだ。法の順守はもちろん大前提としてあるが、被害者やその家族、国民感情にも配慮するため裁判員裁判や被害者参加という制度をつくったのであり、そこを軽視しては本末転倒である。制度自体まだ完全ではないことを認め、裁判員裁判で出された判決の重みをどのように考えるのかなどバランスを取りながら問題点を洗い出し、一つずつ解決していくことで永続的に運用できる制度にしていくべきである。

裁判員は情に流されがちなのはわかるが、かといってそれを軽視しては国民を裁判に参加させる意味がなくなってしまう。この二つのバランスを考えながら、制度を修正していくべきだという流れだ。意見としてよくわかるし、この文だけ読むとまとまっているようには見えるが、前半部で述べている裁判員裁判制度への関心が薄くなっていることについては触れられていない。採点者によっては文章がやや逸れていると判断するかもしれない。この辺が現状説明型の難しいところである。

④それまでの内容を踏まえたものでなくてはならない

気をつけるべき点として、この項目も必要だ。

では、次の文はどうだろう。

 必要なのは現行制度の問題点を順次改善していくことだ。法の順守はもちろん大前提としてあるが、被害者やその家族、国民感情にも配慮するため裁判員裁判や被害者参加という制度をつくったのであり、そこを軽視するのは本末転倒である。国会やマスコミ、法曹関係者や法学部の学生、あるいは実際に裁判員を経験した人などがこの問題について積極的に取り上げ、国民全体で闊達な議論をしていかなくてはならない。(私自身も大学入学後、授業やレポートでこの問題について取り上げたり、実際に裁判を傍聴したりして、より考えを深めていきたい。)

国民の関心への問題に立ち返っている点では評価できるが、こちらは「国会やマスコミ~」のくだりがやや他人任せの印象だ。そのため()を加えたが、この辺は字数や好みにもよるので、自分が納得できるように書けばよい。ここまで書けていれば点数もほとんど変わらない。


テーマ型小論文・例題

テーマ型小論文の練習問題を解いてみよう。字数は400字、600字、800字のいずれかを選ぶこととする。

例題は「学校の課題をインターネットを通じて教えてもらうことについて」というテーマ型小論文だが、短文形式にしてある。

[問]

スマートフォンの普及により、勉強面でもインターネットを活用することが容易となったが、学校で出された課題をインターネット(たとえば質問サイトやSNSなど)を使い、他人から教えてもらうことについて、あなたはどのように考えるか述べなさい。

書いてみただろうか。

では、解説していこう。

質問(Q&A)サイトとは「~について教えてください」「~とは何ですか」など、質問するとその道に詳しい人が善意で回答してくれるサイトのことだ。Yahoo!(ヤフー)知恵袋が最も有名だが、無料でできるので中高生の利用者も多い。この例題は賛成、反対が明確に述べられるので解きやすいとは思うが、次のことを意識しよう。

設問に対する方向性を決めてから書く

つまり、どのような論調かを決めて書くということだ。賛成反対、イエス・ノーが明確に述べられる問題だからといって答えがその二つとは限らない。たいていの問題にはそれ以外の答えもある。

例題でいうと、

①全面的に賛成:こうしたサイトできちんと質問し、答えをもらうのも立派な能力である。積極的に利用していくべきだ。

②~した上で賛成:いきなりサイトで聞くのは安易すぎる。まずは自分でやってみて、それでもわからないときは質問サイトを利用すればよい。

③ヒントならよい:「~について答えを教えてください」など、課題を直接やってもらうような内容はよくないが、わからないことについてヒントを聞くのはよい。

④書いたものを読んでもらう:自分で一通りやってみて、答えやできたものを質問サイトで読んでもらい、よくない点は改善していくという使い方が理想だ。

⑤ネットはよいが質問サイトはダメ:インターネットの検索などは有効利用すべきだが、見知らぬ他人に答えを聞いては課題の意味がなくなる。

⑥基本的には反対:課題は図書館や教科書などを使ってやるべきだ。だが、どうしてもわからない場合、最終手段として質問サイトを使うのはやむを得ない。(②に近いが、否定的ニュアンスがより強い)

⑦全面的に反対:学校の課題はインターネットを使うべきではない。ネットを使うと身につかないし、ネット環境がない人もいるので不公平だ。

ざっと考えただけでもこれだけある。

①が賛成、⑦が反対で、残りは部分否定(条件付き賛成)と呼んでいる。部分否定は課題文型小論文でも詳しく説明するが、要は全面的に賛成ではないが、このような条件を付けた上でならOKという論調だ。書きやすく、自分の意見も述べやすいので、よく(自然と)使うテクニックだ。小論文に正解はないので、①~⑦あるいはその他、どの論調で書いてもかまわないし、どれを選んだからといって、そのことで得点が変わるわけではない。自分のスタンスに沿って選べばよい。

ただ、途中で内容がブレたり、何を書いているのか自分でわからなくならないよう、どのように論を展開していくのか書く前にきちんと決めておくことが大切だ。その際、自分の考えを説明するための具体例(体験談・エピソード・事例など)もセットで考えておこう。

テーマに対し、どのような方向性で書くか

それをどのように展開していくか(構成)

説明にどのネタを入れるか

あらかじめこの三つを決めておけば、書いている途中で迷うことは少なくなる。

例題は結論説明型でも現状分析型でも、どちらで書いてもよい。

結論説明型のメリットは構成が組み立てやすく、内容がブレないことだ。全面的に賛成・反対で書くときには特に有効だ。聞かれているテーマに対する答えをズバッと書いて、その説明を詳しく述べていく。先ほどの⑦の反対パターンで書いてみよう。

このような構成になる。

第一段落:学校の課題をインターネットの質問サイトで教えてもらうことついて、私は反対だ。(テーマに対する答え=結論)

第二段落:課題は自分の学力向上のために出されるものだ。質問サイトで答えを教えてもらっても身につかない。それでは課題の意味がなくなる。(結論の理由説明)

第三段落:また、特に小学生・中学生においては全員がインターネットを使えるわけではない。使える人、使えない人で不公平になる。(二つ目の理由:指定字数が短い場合は入れないほうがよい)

第四段落:インターネットの使い方についてガイドラインを作成し、それを周知徹底していくべきだ。(今後)

これに肉付けして(具体例を入れて)小論文に仕上げていく。

 スマートフォンの普及により、学校の課題をインターネットの質問サイトなどで教えてもらうこともできるようになったが、私はそれには反対だ。

私が小学6年生のとき、算数の比の宿題を自分でやらず、友人に頼んで答えを写させてもらったことがあった。宿題は問題なく終わったが、比についてまったく理解しないままテストを受けたため、結果は散々だった。そのためか比についてはいまでも苦手意識がある。

学校の課題はそれを解くこと、行うことによって、自分の学力を伸ばすために出されるものだ。インターネットの質問サイトで答えを他人に教えてもらったところで身につかない。それでは課題の意味がなくなってしまう。

インターネットによって様々なことが便利に、手軽に調べられるようになった。しかし、だからといってインターネットに頼りすぎると、それなしでは何もできなくなってしまう。簡単な漢字一つも、インターネットで調べなければわからない大人がいるのもその一例だ。学校の授業や課題は自分のためにあるという意識を忘れずに、学生の間はインターネットや見知らぬ他人に、安易に頼らないようにすべきだ。

最後の段落を構成段階のものと変えてみた。

続いて、4段落目に二つ目の内容を入れるパターンで字数を増やしてみよう。「教育格差」という言葉を入れると深みが増す。3段落目までは上記と同じだ。

 スマートフォンの普及により、学校の課題をインターネットの質問サイトなどで教えてもらうこともできるようになったが、私はそれには反対だ。

私が小学6年生のとき、算数の比の宿題を自分でやらず、友人に頼んで答えを写させてもらったことがあった。宿題は問題なく終わることができたが、比についてまったく理解しないままテストを受けたため、結果は散々だった。そのためか比についてはいまでも苦手意識がある。

学校の課題はそれを解くこと、行うことによって自分の学力を伸ばすために出されるものだ。質問サイトで答えを他人に教えてもらったところで身につかない。それでは課題の意味がなくなってしまう。

また小・中学生は特に、全員がインターネットを使えるわけではない。教育格差の広がりが問題視されているが、インターネット環境もその一つである。インターネットの使用を容認すれば、使える人、使えない人で不公平が生じる。パソコンやインターネットを使った学習を全面的に否定するわけではないが、持っている人だけが得するような状況はいじめの温床にも繋がりかねず、避けなくてはならない。

生徒の自主的な学習や自由研究などにはインターネットを活用してよい、授業や教科書でわかることについては禁止など、インターネットの使い方について文部科学省や地方自治体できちんとガイドラインを作成し、それを周知徹底していくべきだ。

次に現状分析型を使い、部分否定で書いてみる。

現状→分析①(メリット)→分析②(デメリット)→今後(まとめ)

このような流れである。中盤を反対にして、デメリット(問題点)→「しかし、」メリット(利点)の順のほうが書きやすい場合もあるので、両パターン頭に入れておこう。

②~した上で賛成:いきなりサイトで聞くのは安易すぎる。まずは自分でやってみて、それでもわからないときは質問サイトを利用すればよい。このような流れで書いてみる。

 パソコンやスマートフォンが普及し、いまや小中学生でもインターネットを使って調べものをするようになった。代表的な質問サイトであるヤフー知恵袋を覗くと、勉強面やその他について教えてくださいという小・中学生の質問や相談も数多く見られる。

私もインターネットを使って調べものをするが、英単語など検索すれば簡単に意味がわかるので、重い辞書をわざわざ持ち歩かなくて済む。わからないことを教師や親に聞こうとすると何かと煩わしく、わかるかどうかもたしかではないが、インターネットではたいていのことがすぐにわかる。近くの大人より手元のスマートフォンを重用するのは当然だ。

だが、学校の課題においてもすぐにインターネットに頼ればよいかというと、それは違う。同級生に何でもすぐに調べる調べ魔がいるが、彼女は自分で考えることを放棄しているようにも見える。特に学校の課題は考えることに意味があるのに、始めからそれを放棄してしまっては為にならない。

私は学校の課題に関して、どうしてもわからないことだけをインターネットで調べるようにしている。まずは考えて、苦労して、そこで初めて何がわからないのかが見えてくる。その上で、最終手段としてインターネットや質問サイトを使う。それが正しい使い方だと考えている。

2段落目にインターネットの利点、3段落目は問題点、最後は今後というより自分のスタンスを書いてまとめた。

採点については「書く上での技術」の「小論文の採点」という項目を参考にしてほしいが、テーマに答えられているか、その考えの根拠が示されているか、構成はうまくまとまっているか、内容に一貫性はあるか、ネタに独自性や深みはあるか、こういうところを自分自身で採点してみよう。小論文は他人に読んでもらうことも大切だが、自分で自分の文章の良し悪しがわかるようになることも大切である。

このサイトの例文もこれが正解というわけではない。構成については大いに参考にしてもらいたいが、内容面については、安易にこれがよい答案だと思わず「ここはどうかと思う」「自分ならこうするのに」などと、自分の意見を考えながら読んでほしい。


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