テーマ型小論文・例題

テーマ型小論文の練習問題を解いてみよう。字数は400字、600字、800字のいずれかを選ぶこととする。

例題は「学校の課題をインターネットを通じて教えてもらうことについて」というテーマ型小論文だが、短文形式にしてある。

[問]

スマートフォンの普及により、勉強面でもインターネットを活用することが容易となったが、学校で出された課題をインターネット(たとえば質問サイトやSNSなど)を使い、他人から教えてもらうことについて、あなたはどのように考えるか述べなさい。

書いてみただろうか。

では、解説していこう。

質問(Q&A)サイトとは「~について教えてください」「~とは何ですか」など、質問するとその道に詳しい人が善意で回答してくれるサイトのことだ。Yahoo!(ヤフー)知恵袋が最も有名だが、無料でできるので中高生の利用者も多い。この例題は賛成、反対が明確に述べられるので解きやすいとは思うが、次のことを意識しよう。

設問に対する方向性を決めてから書く

つまり、どのような論調かを決めて書くということだ。賛成反対、イエス・ノーが明確に述べられる問題だからといって答えがその二つとは限らない。たいていの問題にはそれ以外の答えもある。

例題でいうと、

①全面的に賛成:こうしたサイトできちんと質問し、答えをもらうのも立派な能力である。積極的に利用していくべきだ。

②~した上で賛成:いきなりサイトで聞くのは安易すぎる。まずは自分でやってみて、それでもわからないときは質問サイトを利用すればよい。

③ヒントならよい:「~について答えを教えてください」など、課題を直接やってもらうような内容はよくないが、わからないことについてヒントを聞くのはよい。

④書いたものを読んでもらう:自分で一通りやってみて、答えやできたものを質問サイトで読んでもらい、よくない点は改善していくという使い方が理想だ。

⑤ネットはよいが質問サイトはダメ:インターネットの検索などは有効利用すべきだが、見知らぬ他人に答えを聞いては課題の意味がなくなる。

⑥基本的には反対:課題は図書館や教科書などを使ってやるべきだ。だが、どうしてもわからない場合、最終手段として質問サイトを使うのはやむを得ない。(②に近いが、否定的ニュアンスがより強い)

⑦全面的に反対:学校の課題はインターネットを使うべきではない。ネットを使うと身につかないし、ネット環境がない人もいるので不公平だ。

ざっと考えただけでもこれだけある。

①が賛成、⑦が反対で、残りは部分否定(条件付き賛成)と呼んでいる。部分否定は課題文型小論文でも詳しく説明するが、要は全面的に賛成ではないが、このような条件を付けた上でならOKという論調だ。書きやすく、自分の意見も述べやすいので、よく(自然と)使うテクニックだ。小論文に正解はないので、①~⑦あるいはその他、どの論調で書いてもかまわないし、どれを選んだからといって、そのことで得点が変わるわけではない。自分のスタンスに沿って選べばよい。

ただ、途中で内容がブレたり、何を書いているのか自分でわからなくならないよう、どのように論を展開していくのか書く前にきちんと決めておくことが大切だ。その際、自分の考えを説明するための具体例(体験談・エピソード・事例など)もセットで考えておこう。

テーマに対し、どのような方向性で書くか

それをどのように展開していくか(構成)

説明にどのネタを入れるか

あらかじめこの三つを決めておけば、書いている途中で迷うことは少なくなる。

例題は結論説明型でも現状分析型でも、どちらで書いてもよい。

結論説明型のメリットは構成が組み立てやすく、内容がブレないことだ。全面的に賛成・反対で書くときには特に有効だ。聞かれているテーマに対する答えをズバッと書いて、その説明を詳しく述べていく。先ほどの⑦の反対パターンで書いてみよう。

このような構成になる。

第一段落:学校の課題をインターネットの質問サイトで教えてもらうことついて、私は反対だ。(テーマに対する答え=結論)

第二段落:課題は自分の学力向上のために出されるものだ。質問サイトで答えを教えてもらっても身につかない。それでは課題の意味がなくなる。(結論の理由説明)

第三段落:また、特に小学生・中学生においては全員がインターネットを使えるわけではない。使える人、使えない人で不公平になる。(二つ目の理由:指定字数が短い場合は入れないほうがよい)

第四段落:インターネットの使い方についてガイドラインを作成し、それを周知徹底していくべきだ。(今後)

これに肉付けして(具体例を入れて)小論文に仕上げていく。

 スマートフォンの普及により、学校の課題をインターネットの質問サイトなどで教えてもらうこともできるようになったが、私はそれには反対だ。

私が小学6年生のとき、算数の比の宿題を自分でやらず、友人に頼んで答えを写させてもらったことがあった。宿題は問題なく終わったが、比についてまったく理解しないままテストを受けたため、結果は散々だった。そのためか比についてはいまでも苦手意識がある。

学校の課題はそれを解くこと、行うことによって、自分の学力を伸ばすために出されるものだ。インターネットの質問サイトで答えを他人に教えてもらったところで身につかない。それでは課題の意味がなくなってしまう。

インターネットによって様々なことが便利に、手軽に調べられるようになった。しかし、だからといってインターネットに頼りすぎると、それなしでは何もできなくなってしまう。簡単な漢字一つも、インターネットで調べなければわからない大人がいるのもその一例だ。学校の授業や課題は自分のためにあるという意識を忘れずに、学生の間はインターネットや見知らぬ他人に、安易に頼らないようにすべきだ。

最後の段落を構成段階のものと変えてみた。

続いて、4段落目に二つ目の内容を入れるパターンで字数を増やしてみよう。「教育格差」という言葉を入れると深みが増す。3段落目までは上記と同じだ。

 スマートフォンの普及により、学校の課題をインターネットの質問サイトなどで教えてもらうこともできるようになったが、私はそれには反対だ。

私が小学6年生のとき、算数の比の宿題を自分でやらず、友人に頼んで答えを写させてもらったことがあった。宿題は問題なく終わることができたが、比についてまったく理解しないままテストを受けたため、結果は散々だった。そのためか比についてはいまでも苦手意識がある。

学校の課題はそれを解くこと、行うことによって自分の学力を伸ばすために出されるものだ。質問サイトで答えを他人に教えてもらったところで身につかない。それでは課題の意味がなくなってしまう。

また小・中学生は特に、全員がインターネットを使えるわけではない。教育格差の広がりが問題視されているが、インターネット環境もその一つである。インターネットの使用を容認すれば、使える人、使えない人で不公平が生じる。パソコンやインターネットを使った学習を全面的に否定するわけではないが、持っている人だけが得するような状況はいじめの温床にも繋がりかねず、避けなくてはならない。

生徒の自主的な学習や自由研究などにはインターネットを活用してよい、授業や教科書でわかることについては禁止など、インターネットの使い方について文部科学省や地方自治体できちんとガイドラインを作成し、それを周知徹底していくべきだ。

次に現状分析型を使い、部分否定で書いてみる。

現状→分析①(メリット)→分析②(デメリット)→今後(まとめ)

このような流れである。中盤を反対にして、デメリット(問題点)→「しかし、」メリット(利点)の順のほうが書きやすい場合もあるので、両パターン頭に入れておこう。

②~した上で賛成:いきなりサイトで聞くのは安易すぎる。まずは自分でやってみて、それでもわからないときは質問サイトを利用すればよい。このような流れで書いてみる。

 パソコンやスマートフォンが普及し、いまや小中学生でもインターネットを使って調べものをするようになった。代表的な質問サイトであるヤフー知恵袋を覗くと、勉強面やその他について教えてくださいという小・中学生の質問や相談も数多く見られる。

私もインターネットを使って調べものをするが、英単語など検索すれば簡単に意味がわかるので、重い辞書をわざわざ持ち歩かなくて済む。わからないことを教師や親に聞こうとすると何かと煩わしく、わかるかどうかもたしかではないが、インターネットではたいていのことがすぐにわかる。近くの大人より手元のスマートフォンを重用するのは当然だ。

だが、学校の課題においてもすぐにインターネットに頼ればよいかというと、それは違う。同級生に何でもすぐに調べる調べ魔がいるが、彼女は自分で考えることを放棄しているようにも見える。特に学校の課題は考えることに意味があるのに、始めからそれを放棄してしまっては為にならない。

私は学校の課題に関して、どうしてもわからないことだけをインターネットで調べるようにしている。まずは考えて、苦労して、そこで初めて何がわからないのかが見えてくる。その上で、最終手段としてインターネットや質問サイトを使う。それが正しい使い方だと考えている。

2段落目にインターネットの利点、3段落目は問題点、最後は今後というより自分のスタンスを書いてまとめた。

採点については「書く上での技術」の「小論文の採点」という項目を参考にしてほしいが、テーマに答えられているか、その考えの根拠が示されているか、構成はうまくまとまっているか、内容に一貫性はあるか、ネタに独自性や深みはあるか、こういうところを自分自身で採点してみよう。小論文は他人に読んでもらうことも大切だが、自分で自分の文章の良し悪しがわかるようになることも大切である。

このサイトの例文もこれが正解というわけではない。構成については大いに参考にしてもらいたいが、内容面については、安易にこれがよい答案だと思わず「ここはどうかと思う」「自分ならこうするのに」などと、自分の意見を考えながら読んでほしい。

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